・209系試作車(元901系)(画像をクリックすると更に拡大画像が見られます)
クハ208-901以下10連
元901系A編成であったクハ208-901以下10連
2002.2.11 京浜東北線秋葉原駅にて撮影
 1992年、従来の思想にとらわれない次世代の鉄道車両のあり方を模索する使命を帯びて京浜東北線に901系として10両編成3本の通勤電車が投入されました。新造価格の半減と寿命の適正化、メンテナンスフリー化、重量の半減などが目標とされました。
 車体は205系に続くオールステンレス製ですが、従来工法の延長で軽量化を図った東急車輌製と、2シート工法と呼ばれる斬新な工法を採用した川崎重工製とで、側窓の違いや妻面のビードの有無など、様々な差異が見られるのが特徴です。また、両社製ともに、側面にビードがない、フラットな車体となったのも斬新なものでした。
 制御方式は、JR東日本では初のVVVFインバータ制御とされ、各編成に別のタイプのインバータが搭載されました。A編成ではトランジスタを使用した個別制御(実際には4個のインバータを直列接続しているとの説も?)、B編成は高耐圧小容量のGTOによる2レベルインバータで個別制御、C編成は低耐圧大容量GTOによる3レベルインバータで4個一括制御というように先進的なものから旧来の技術でも可能なものまで、様々な方式が試されました。
 各編成での比較検討の結果は量産車209系に反映され、1994年1〜3月に901系は209系900/910/920番代に改番されました。
 2001年には東北新幹線のDS-ATCシステムの在来線版である、D-ATC装置の取付が行われ、この工事と合わせて、900番代は量産車と同じ制御装置に、910番代では制御ソフトの変更が行われ、ベクトル制御への対応などの変更がなされています。920番代は2003年にD-ATC取付が行われましたが、特に変化はありませんでした。
 2006年末に910番代が、2007年3月に920番代が、2007年8月には900番代が、それぞれ運用を離脱し、大部分が既に廃車となっています。
 900番代走行音(登場時)[208901a.rm/558KB]
 元901系A編成である900番代の走行音です。富士電機製のパワートランジスタを使用したインバータで、チョッパ車のように鳴り続ける非同期モードの音が特徴です。とは言っても、ある程度の速度になるとやはり非同期モードは終わるようで、よく聞くとまるで最近の2レベルIGBTインバータのような鳴り方をしています。回路構成は確かにそれに近いようですし、制御方法もほぼ同じ内容のものと思われます。ただし、4個のインバータを直列接続して1両分の装置としていたらしく、1ユニットのインバータを構成する素子数がかなり多いようでコスト的にもっとも不利だったものと予想されます。
 録音は京浜東北線西川口→川口間です。何となく4両の電動車の中で一番音の大きそうなモハ208-901で録ったのですが、隣の車両のコンプレッサの音が…。
 ちなみに、900番代と910番代では個別制御(前述の通り900番代は厳密には違うかも)となっていて、共に全ての電動車にインバータが搭載され、そのうちモハ209形にコンプレッサ、モハ208形にSIVが搭載される構成となっています。
 910番代走行音(登場時)[209911a.rm/552KB]
 こちらは元B編成の910番代でモハ209-911の走行音です。東芝製(と思われる)の高耐圧低容量GTOサイリスタによる個別制御の2レベルインバータが採用されています。既に登場していた阪急8000系などと似たタイプですが、音の変化は同車に比べて加速時は1回少なく減速時は1回多いという、不思議な関係が成り立っています。ちなみに、この910番代の場合、インバータ装置は1モーター分ごとに分割され、台車付近に分散配置される非常に珍しい形態となっています。当時の鉄道雑誌による新車紹介で「分散制御」などと呼ばれたりしましたが、そんなわけの分からない制御方法は考えられず、分散「配置」のことを言いたかったんだろうと思われます。
 このモハ209-911は編成中の4両の電動車の中でも一番標準的な音をたてている、と思っていたのですが、久しぶりに乗ってみたら、非同期の次のパルスモードの最後に「ファン」という音も少し聞こえるし、なんとなく荒っぽい鳴り方になっていた感じもします。
 録音は京浜東北線北浦和→浦和間です。
 910番代走行音(登場時)[208911a.rm/558KB]
 同じく910番代の、モハ208-911の走行音です。以前はこの車両が「ファン」という感じの雑音をよく鳴らしていた記憶があるのですが、いつの間にかほとんど聞こえなくなり、非同期の次のパルスモードで最後に少しかすれるような雰囲気があるくらいでしょうか。比較的普通の音かもしれません。
 録音は京浜東北線西川口→川口間です。
 910番代走行音(登場時)[209912a.rm/555KB]
 同じく910番代の、モハ209-912の走行音です。非同期の2つ後のパルスモードが始まるあたりに独特の雰囲気があり、何となく373系の雑音の激しいタイプみたいな鳴り方でもあるように感じられます。ブレーキの時も最後のパルスモード切替の直前あたりで、そのような音が鳴っているようです。
 録音は京浜東北線川口→西川口間です。
 910番代走行音(登場時)[208912a.rm/797KB]
 同じく910番代の、モハ208-912の走行音です。これはほぼ標準に近い音と言っていいように感じられます。正直なところ違いを論じようとすること自体無理があるような、とも感じているんですが…。
 録音は京浜東北線蒲田→大森間です。
 910番代走行音(登場時/空転)[208912b.rm/647KB]
 同じモハ208-912の走行音なのですが、雨でもないのになぜか空転してしまいました。非同期モードの時から妙に前後動が激しいなとは感じていたのですが、その後こんなに不安定な音が出てくるとは思ってもみなかった、というのが感想です。このファイルでも非同期の最後のあたりからしばらく「ガコガコ」という感じの音が聞こえるのではないかと思います。
 録音は京浜東北線大井町→品川間です。
 920番代走行音[209921a.rm/527KB]
 こちらは元C編成の920番代で、モハ209-921の走行音です。非同期(と言っていいかどうかは不明ですが)の音の響き方がすごいですね。基本的には量産車と似たような雰囲気なのですが、一つ一つのパルスモードが少し伸びがあるようにも思われますし、何より加速度が高いです。「加速時間が短いなぁ」と思っていたのに実は90km/h出ていたということもあるくらいです。
 録音は京浜東北線蕨→西川口間です。
 920番代走行音[209922a.rm/527KB]
 同じく920番代で、モハ209-922の走行音です。こちらはTD継手がだいぶくたびれていたんでしょうかね。2つ目と6つ目のパルスモードの始まりで、「ガラガラ…」系の音が激しくなります。特に6つ目のパルスモード(ここが1パルスモードでしょうね)に入る時の響き方はすごいです。減速時も少し鳴っていますね。そしてブレーキの最後が下手です(笑)
 録音は京浜東北線西川口→蕨間です。
 900番代走行音(GTO化後)[209901ga.rm/539KB]
 900番代はD-ATC搭載工事と同時に、量産車と同じGTOの3レベルインバータに交換されてしまいました。そのため、モハ209-901、902は、VVVF装置とコンプレッサが同居する車両となりました。モハ208-901、902はコンプレッサのないM'車ではあるものの、SIV付でVVVF装置は搭載しないという、何とも中途半端な存在でした。
 こちらは改造後のモハ209-901の走行音で、至って平凡なものになっています。
 録音は京浜東北線蕨→西川口間です。
 900番代走行音(GTO化後/空転滑走)[209901gb.rm/804KB]
 GTO化改造後のモハ209-901で、雨の日の録音です。209系の量産後期には、だいぶ雨の空転も収まっていた印象だったのですが、それより後で登場したこの900番GTO化車両であっても、ずいぶんと空転していますね。加速が弱々しい、まるで209系登場当時を思い出すようです。高速域の音はMT73なんでしょうかね。低めの唸りをたてています。
 録音は京浜東北線鶴見→川崎間です。
 900番代走行音(GTO化後)[209902ga.rm/528KB]
 GTO化改造後のモハ209-902の走行音です。1パルスモードに入る際に、モハ209-922に近い、駆動装置の激しい唸りが聞こえます。高速域での加速音も大きめですし、ノッチオフした後でも「カランカラン」というか「ガラガラ…」と言うか、速度域によって多少の変化はありますが、そのような音が大きく聞こえており、いずれにしても状態が悪そうですね。減速時には特に高速域で、やはり異常に大きな音が鳴っていますから、やはり駆動装置の状態が悪かったものと思われます。
 録音は京浜東北線川口→西川口間です。
 910番代走行音(ソフト変更)[209911na.rm/498KB]
 910番代はD-ATC搭載時に、VVVF装置の制御ソフトが変更されたらしく、ベクトル制御への対応が行われています(それってソフトだけじゃなくて、制御部はCPU回路を交換しているんじゃ?)。その際、減速時には最後に非同期モードに移行し、かなりの低速域まで回生ブレーキが動作するなど、大きな変化が生じました。
 このモハ209-911は、2000年3月に録音した、ソフト変更前の音と比べると、クセのない音に変わっていたように思います。高速域では相変わらずの響き方ですね。
 録音は京浜東北線蕨→西川口間です。
 910番代走行音(ソフト変更)[208911na.rm/392KB]
 モハ208-911のソフト変更後の走行音です。こちらもあまりクセはないようですが、非同期モードの次のパルスモードから、その次のパルスモードに移る際の「間」が大きいですね。もっとも、これは区間によっても変わるし、ソフト変更前にもよくありましたから、この車両特有ではないと思われます。
 録音は京浜東北線さいたま新都心→与野間です。
 910番代走行音(ソフト変更)[209912na.rm/513KB]
 モハ209-912のソフト変更後の走行音です。この車両もほとんどクセはなくなっているように感じられます。
 録音は京浜東北線浦和→北浦和間です。
 910番代走行音(ソフト変更)[208912na.rm/554KB]
 モハ208-912のソフト変更後の走行音です。この車両は以前の録音でも標準的な鳴り方ですが、この録音の時もやはり標準的な音のようですね。ソフト変更後で言えば、そもそもあまり差がない状態ではあるのですが…。
 録音は京浜東北線川口→西川口間です。
・その他の写真
 まだ901系だった頃の写真なんですが、はっきり言ってロクな写り方をしてません。それ以前に編成もはっきりしていませんし…。
 手元の記録によるとクハ901-3つまりC編成らしいのですが…。
 1993.5.20 京浜東北線東京駅にて撮影
 元B編成、クハ209-911以下10両の編成です。側面の窓が大型1枚窓ではなく、縦の桟が入った2枚構成の窓であることが分かると思います。ちなみに、この編成は全車東急車輌製です(A編成は川崎重工、C編成は4・5号車のC'編成部分のみ大船工場、残りは川重)。
 2006.3.18 京浜東北線川崎〜鶴見間(矢向踏切)にて撮影
 元C編成、クハ209-921以下10両の編成です。側面の窓がA編成(900番代)同様大型1枚窓であることが分かると思います。もちろん、元C'編成の4・5号車はB編成のような2枚窓(東急車輌と同様の工法で大船工場が製作したため)ですが、この解像度では判別は難しいしょうかね。
 2006.3.15 京浜東北線川崎〜鶴見間(矢向踏切)にて撮影
 元A編成、モハ209-901からクハ209-901方向の室内です。内装へのFRPへの多用や、片持ち式のバケットシートなど、各種の新機軸が取り入れられ、多くが209系に引き継がれました。室内の造作については、このA編成や、C編成の大部分の号車の構成が209系の基本となっています。ただし、ドア上の次駅表示器については、量産車で新規採用となっています。
 2005.1.29 京浜東北線蒲田駅にて撮影
 元B編成、モハ209-911からクハ209-911方向の室内です。特にB編成のFRP部品の変色は激しかった印象があります。枕木方向に配置された蛍光灯や冷房吹き出し口などは、この編成独自の装備として終了となりました。
 2004.8.8 京浜東北線蒲田駅にて撮影
 元C編成、サハ209-921からクハ209-921方向の室内です。900番代と大差はなく、比較的量産化仕様に近い内装です。当然ながらドア上の次駅表示器は装備されていません。
 2005.12.25 京浜東北線桜木町駅にて撮影
 モハ209-901のVVVFインバータ装置です。900番代では各電動車の海側にこの装置が搭載されています。最近のIGBT個別制御タイプのものよりコンパクトなくらいに見えてしまいます。
 2000.2.4 川崎駅にて撮影
 モハ209-911の山側後位寄りのVVVFインバータ装置です。先述の通り台車付近の4ヶ所に分散配置されているため、どちらの側面からでもこのように装置の姿を見ることが可能です。これを4つ合わせると255系やJR西日本のGTO個別制御車各種のような装置になることは容易に想像がつくと思います。
 2000.2.5 品川駅にて撮影
 モハ209-912の山側前位寄りのVVVFインバータ装置です。この部位だと、すぐ右隣(後位寄り)にフィルタリアクトルも見えています。
 2000.9.23 根岸線石川町駅にて撮影
 モハ209-921のVVVFインバータ装置です。量産車に反映されたシステムであり、たてる音もほとんど同じなのですが、装置の形はかなり違っています。量産車の側面が網状であるのに対し、こちらは完全に蓋をされたような形になっていて、さらに上端部分も角が取れているというような特徴があります。
 2001.8.6 京浜東北線南浦和駅にて撮影
 モハ209-901の、D-ATC装備後のVVVF装置です。量産車とまるで同じ外観になってしまいました。
 2002.2.16 京浜東北線南浦和駅にて撮影


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